ふだんは仲がよさそうなのに、急にたたき合いが始まる。どうして喧嘩になるのか分からない。
放っておいていい喧嘩と、止めたほうがいい喧嘩の違いを知りたい。
多頭飼いの家では、猫どうしの小さな喧嘩はめずらしくありません。運営者の家でも、たたき合いや追いかけ合いが起きることがあります。
喧嘩の原因を考えるときに手がかりになるのが、その2匹がどんな関係なのかです。仲のよい2匹のじゃれ合いと、もともと緊張している2匹の衝突とでは、気をつけることがまったく違います。
この記事では、猫どうしの緊張をテーマにした米国猫臨床家協会(AAFP)の2024年の指針と、いくつかの研究をもとに、猫どうしの関係の見分け方を整理しました。運営者の家で実際に起きた喧嘩も、指針に照らして読み解いていきます。
この記事でわかること
- 猫どうしの関係は「仲良し」「がまん」「対立」の3つで考えると分かりやすい
- ごはんどきのたたき合いには、器を分けたうえで中身も確かめやすいグランツのような主食が役立つ
- 猫の社会は上下関係で決まるわけではない
- いちばん多い緊張のサインは「じっと見る」
- 止めようとして猫をつかむと、人がかまれることがある
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【結論】猫の喧嘩の原因は、2匹の関係とその場のきっかけで考える
先に、猫どうしの喧嘩の原因の考え方をまとめます。
- 仲良し:くっついて寝る、なめ合う。喧嘩は遊びの行きすぎが多い
- がまん:仲よくもないが争いもしない。物の取り合いや、すれ違いざまの小競り合いが起きやすい
- 対立:にらむ、通り道をふさぐ、隠れる。本気の喧嘩につながりやすい
- きっかけ:ごはんの時間、大きな音、遊びの行きすぎ、体の不調など
どの関係でも、ごはんやトイレの場所を分けることは喧嘩を減らす基本です。まずは2匹の関係を見極め、喧嘩のきっかけになっている場面を減らすことから始めましょう。
猫どうしの3つの関係【仲良し・がまん・対立】
猫どうしの関係は、どう見分ければよいのでしょうか。AAFPの指針をもとに、3つに分けて見ていきます。
猫の社会は「上下関係」で決まるわけではない
指針は、猫の社会は上下関係や優位・劣位で成り立っているわけではないとしています。「どちらが上か」を決めさせるという考え方は、指針とは合いません。
また、家の中の猫の組み合わせは飼い主が決めたものです。そのため、絆で結ばれた仲間ではなく、同じ家にいる同居人のような関係の猫どうしもいると、指針は説明しています。
仲良し:くっついて寝る、なめ合う、鼻をつける
指針が仲のよさのサインに挙げているのは、体を寄せ合ったり重なったりして寝ること。お互いの毛づくろい、体のこすりつけ、鼻と鼻をつけるあいさつも、仲のよい2匹に見られるしぐさです。
運営者の家でよく見るのは、お互いの毛づくろい、いつも近くにいる、寄り添って寝る、といった様子です。片方がおもちゃで遊んでいるときに、横取りせずに見守っていることもあります。
仲のよい2匹は、追いかけっこでも追う役と追われる役が入れ替わります。
仲良しの2匹の喧嘩は、遊びが行きすぎたものが多いと考えられます。じゃれ合いとの見分け方は、鳴き声と追いかけ方で見分ける記事で紹介しています。
がまん:仲よくもないが、争いもしない
仲のよいしぐさも、喧嘩のしぐさも見せない2匹もいます。指針は、こうしたお互いに「がまんしている」関係も、受け入れてよい状態だとしています。
たとえば、同じベッドの上にいても、体をつけずに両端に分かれ、背中を向け合っている2匹。この様子がいつも続くなら、絆はなく、お互いをがまんしているだけだと指針は説明しています。
飼い主は「仲よし」と思っていても、よく見ると鼻をつけ合ったり、一緒に寝たり、毛づくろいし合ったりはしていない、ということもよくあるそうです。
対立:じっと見る、通り道をふさぐ、隠れる
猫どうしに緊張があるときのサインには、はっきりしたものと、見逃しやすいものがあります。
- はっきりしたサイン:シャーと鳴く、うなる、猫パンチ、追いかける、取っ組み合う
- 気づきにくいサイン:相手を見つめ続ける、通路に陣取る、席を外す、身を隠す
2〜4匹の猫と暮らす米国の飼い主2,492人の回答では、最も多かった衝突のサインは「見つめる」ことで、44.9%の家庭が毎日目にしていたと報告されています。シャーと鳴く様子を毎日見る家庭は18%でした(Elzerman ほか, 2020年)。
指針に載っている事例では、にらんだり通り道をふさいだりする行動が、廊下や階段で起きていました。そのせいで、トイレのある部屋に入れなくなっていた猫もいたそうです。
3つの関係の見分け方
ここまでの内容を、表にまとめます。
| 関係 | よく見られる様子 | 喧嘩のときに気をつけること |
|---|---|---|
| 仲良し | くっついて寝る、なめ合う、鼻をつける | 遊びの行きすぎ。鳴き声が出たら間を区切る |
| がまん | 近くにいても体をつけない、背中を向け合う | 物の取り合い。ごはんやトイレを分けて置く |
| 対立 | じっと見る、通り道をふさぐ、隠れる | 本気の喧嘩とけが。部屋を分け、体の不調も確かめる |
指針と研究の内容をまとめたもので、関係は日によって変わることもあります。
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運営者の家で起きた喧嘩を、指針で読み解く
ここからは、運営者の家で実際に起きた喧嘩を例に、原因を考えていきます。あなたの家の猫にも、似た場面はないでしょうか。
実例1:ごはんの準備を始めると、後ろでたたき合う

キャットフードの準備を始めると、後ろで頭を軽くたたき合う2匹がいます。大喧嘩にはなりませんが、ほぼ毎日のことです。
ごはんはちゃんと全員分あるのに、準備を始めると毎日のようにたたき合いが始まります。
指針によると、ごはんの準備をする場所や食事の時間に猫が集まると、飼い主が気づかないうちに緊張が生まれやすいとされています。食事の前に猫パンチやにらみ合いが増えるのも、緊張のサインの一つです。
指針は、仲のよい猫どうしでも食べる場所は分けるよう勧めています。部屋を分けられない場合も、段ボール箱を伏せて置き、互いの姿が見えないようにする方法があるとのこと。
主食の選び方は、原材料欄の気をつけたい言葉を商品名で紹介した記事やパッケージの表示で購入を見送った例、割合まで書かれた袋はグランツの原材料と割合の記事で見られます。
実例2:大きな声で鳴いた子を、年長の子が追いかける

よく鳴く子がいて、ときどき大きめの声で鳴きます。すると年長の子が近寄っていき、追いかけ回すことがあります。毎回起きるわけではありません。
猫が興奮して、ほかの猫に矛先を向けた事例を調べた研究では、95%で大きな音かほかの猫とのやりとりがきっかけでした(Amat ほか, 2008年)。研究チームは、こうした行動の動機として最も多いのは「怖さ」だろうとしています。
大きな鳴き声が、年長の子にとって落ち着かないきっかけになっている可能性があります。追いかけられる子が逃げ込める、出入り口の2つある隠れ場所や高い場所を用意しておきましょう。
実例3:仲よく毛づくろいしていた姉妹が、急に威嚇する

いつもは毛づくろいし合ったり、並んで寝たりしている姉妹が、毛づくろいの途中で猫キックを始め、最後はうなって威嚇したことがありました。
猫どうしのやりとりを分析した研究では、遊びと喧嘩の間に「中間」のやりとりがあると報告されています。片方がやめたいのに、もう片方が続けたいときに起き、喧嘩に変わることもありますが、関係が壊れたわけではないと考えられています(Gajdoš-Kmecová ほか, 2023年)。
ふだん仲のよいしぐさがある2匹なら、たまの衝突が長い付き合いを壊すことはないと考えられています。鳴き声が出たら、おもちゃで気をそらして間をとりましょう。
実例4:止めようとして、飼い主がかまれた
喧嘩を止めようと猫をつかんだところ、かなりの力でかまれてしまったことがあります。
喧嘩を止めようとして猫をつかんだら、思いきりかまれてしまいました。
指針は、にらみ合いの段階でも猫を抱き上げないことを勧めています。クッションや段ボールを間に入れて目線を切り、それぞれを別の遊びに誘うか、安全に別の場所へ移すのが基本です。
先ほどの研究でも、興奮した猫が矛先を向けた相手で最も多かったのは飼い主でした。安全な止め方は、素手で割って入らない喧嘩の止め方の記事でくわしく紹介しています。
関係ごとの喧嘩の対処法
関係が見分けられたら、どう対処すればよいのでしょうか。関係ごとにまとめます。
仲良しの2匹:見守り、行きすぎたら気をそらす
鳴き声のない取っ組み合いなら、見守っていてかまいません。うなり声が出たり、片方が逃げたがったりしたら、おもちゃで誘って気をそらします。
指針がすすめているのは、遊び好きの猫と毎日2回以上、5分以上ずつおもちゃで遊ぶこと。猫どうしの遊びだけに任せず、飼い主が遊ぶ時間をつくりましょう。
がまんの2匹:物を分けて、取り合いのきっかけを減らす
お互いにがまんしている2匹は、物の取り合いやすれ違いが喧嘩のきっかけになりがちです。食器や水入れ、トイレ、爪とぎ、隠れ場所は、それぞれ家の中のばらばらの場所へ置きましょう。
隠れ場所は猫の数より1つ多くが目安です。いつも同じ猫が追いかけられているなら、その猫だけが入れる部屋や場所を用意することも考えます。
対立する2匹:部屋を分け、体の不調も確かめる
本気の喧嘩が続くときは、いったん部屋を分けるのが先決。指針によると、落ち着くまでに数時間から2日ほどかかることがあります。
急に関係が悪くなったときは、どちらかの体の痛みや病気がきっかけのこともあります。動物病院で体を診てもらい、仲直りは時間をかけて進めましょう。けがの見方はけがをしたときの確かめ方の記事にまとめています。
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猫の喧嘩の原因についてよくある質問
喧嘩の原因について、飼い主が迷いやすいところをQ&Aで補足します。
Q1. どちらが上か、喧嘩で決めさせたほうがいいですか?
AAFPの指針は、猫の社会は上下関係で成り立っているわけではないとしています。喧嘩で決着をつけさせるのではなく、ごはんやトイレの場所を分け、緊張のきっかけを減らしましょう。
Q2. 一緒に寝ないのは、仲が悪いからですか?
仲よくもないが争いもしない「がまん」の関係も、指針は受け入れてよい状態としています。にらむ、通り道をふさぐ、隠れるといったサインがなければ、無理に仲よくさせる必要はありません。
Q3. ごはんの時間にだけ喧嘩します。
食事の前後は、猫どうしの緊張が生まれやすい時間です。器を離して置く、段ボールなどで目隠しをする、別々の部屋で食べさせるなどして、食事の場所を分けてみましょう。
Q4. 仲のよかった2匹が急に喧嘩するようになりました。
体の痛みや病気、動物病院から帰ってきたときのにおいの変化、外の猫の気配などがきっかけになることがあります。まず動物病院で体を診てもらいましょう。
まとめ:猫の喧嘩は関係を見分けて、きっかけを減らす
猫どうしの喧嘩の原因について、大事な点を振り返ります。
この記事のまとめ
- 関係は「仲良し」「がまん」「対立」の3つで考える
- 猫の社会は上下関係で決まるわけではない
- いちばん多い緊張のサインは「じっと見る」
- ごはんの時間と大きな音は、喧嘩のきっかけになりやすい
- 止めるときは猫をつかまず、物で間を区切る
猫どうしの関係は、日によっても変わります。ふだんの様子を見ておくことが、喧嘩の原因に早く気づく近道です。
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参考にした指針と研究
- Rodan I ほか. 2024 AAFP intercat tension guidelines: recognition, prevention and management. J Feline Med Surg 26(7), 2024(PMC11292941)
- Elzerman AL ほか. Conflict and affiliative behavior frequency between cats in multi-cat households: a survey-based study. J Feline Med Surg 22(8):705-717, 2020(PMC7383420)
- Amat M ほか. Evaluation of inciting causes, alternative targets, and risk factors associated with redirected aggression in cats. J Am Vet Med Assoc 233(4):586-589, 2008(PMID 18710313)
- Gajdoš-Kmecová N ほか. An ethological analysis of close-contact inter-cat interactions determining if cats are playing, fighting, or something in between. Sci Rep 13:92, 2023(PMC9879969)