家の猫どうしが急に喧嘩を始めた。止めに入りたいけれど、どうすればけがをさせずにすむのか分からない。
何度も繰り返すので、仲を戻す方法や、喧嘩が起きにくい部屋の整え方を知りたい。
一緒に暮らす猫どうしの喧嘩は、多頭飼いの家ではめずらしくありません。
ただ、慌てて素手で抱き上げて引き離すと、興奮した猫にかまれたり、引っかかれたりすることがあります。止め方には、手順があります。
この記事では、2024年に公開された米国猫臨床家協会(AAFP)の多頭飼いの猫の緊張に関する指針と、猫の行動の研究をもとに、喧嘩の止め方から再発を防ぐ環境づくり、仲直りの進め方までを整理しました。
この記事でわかること
- 喧嘩は「止める・離す・原因を減らす」の順で考える
- ごはんの場所を分けるときは、中身まで見て選べるグランツのような主食を用意しておくと迷いにくい
- 猫を抱き上げず、クッションや段ボールを間に入れて離す
- トイレやごはんは「数」より「置き場所を分ける」ことが大切
- 猫を平等に扱う必要はない。猫ごとに必要なものを用意する
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【結論】猫の喧嘩は叱らずに離し、原因になる環境と体の不調を見直す
先に、猫どうしの喧嘩への向き合い方をまとめます。
- 止める:抱き上げず、クッションや段ボールを猫の間に入れて目線を切る
- 離す:別々の部屋に分け、落ち着くまで数時間〜2日ほど会わせない
- 原因を減らす:体の痛みや病気を確かめ、ごはん・トイレ・隠れ場所を分けて置く
- やらない:大声で叱る、たたく、無理に仲直りさせる
喧嘩をした猫を叱っても、関係はよくならないと指針は説明しています。まず安全に離し、原因を一つずつ減らしていきましょう。
猫どうしが喧嘩をしたときの止め方と引き離し方
目の前で猫が喧嘩を始めたら、どうすればよいのでしょうか。AAFPの指針に沿って、順に見ていきます。
まず、遊びか喧嘩かを見分ける
猫どうしの取っ組み合いには、遊びも含まれます。追いかけ合う、組み合う、軽くかむといった動きは、遊びでも喧嘩でも見られるものです。
- 遊びの可能性が高い:鳴き声を出さずに組み合っている
- 遊びではない可能性が高い:一方だけが追いかけ、鳴き声を出し、動きが止まる間が何度もある
- 関係がこじれているサイン:ほかの時間に、くっついて寝る・なめ合うなどの姿がない
指針によると、本当に喧嘩をしている猫どうしは、ふだん仲のよいしぐさを見せることがあまりありません。遊びとの見分け方は、じゃれ合いと喧嘩の境目を説明した記事でも紹介しています。
にらみ合いの段階なら、物で目線をさえぎる
猫どうしがじっとにらみ合っているときは、猫を抱き上げないことが大切です。指針は、クッションや段ボールなどの物を猫の間に置いて目線を切るよう勧めています。
そのうえで、それぞれをおもちゃなど別の遊びに誘うか、安全に別の場所へ移します。大きな声を出したり、手でたたいたりするのはやめましょう。
本気の喧嘩は、大きなタオルや段ボールで分ける
取っ組み合いの喧嘩になったら、素手で割って入るのは避けます。大きなタオルや毛布をかぶせるか、段ボールや板を間に差し込んで、猫どうしを分けましょう。
興奮した猫は、近くにいる人に怒りを向けることがあります。ある研究では、外の猫や大きな音で興奮した猫が、いちばん多く矛先を向けた相手は飼い主で、次が同じ家の猫でした(Amat ほか, 2008年)。
長袖を着る、厚手のタオルを使うなど、自分の身を守る準備をしてから近づいてください。
落ち着くまで、別々の部屋で過ごさせる
分けたあとは、ドアを閉めた別々の部屋へ。指針によると、元の様子に戻るまでには数時間から2日ほどかかることもあるそうです。
離している間も、それぞれの部屋にトイレ・ごはん・水・休める場所を用意しておきます。落ち着いたように見えても、すぐに同じ部屋に戻さないようにしましょう。
叱らない。罰は関係を悪くする
喧嘩のあとに叱ったり、罰を与えたりしたくなるかもしれません。けれども指針は、脅したり嫌がることをしたりする対応は、状況を悪くするだけとしています。
猫は先の計画を立てて行動するのではなく、その場の怖さや不満から反応しています。「わざと」「いじわるで」と考えず、何が怖かったのかを探る方が近道です。
喧嘩のあとは、体の傷を確かめる
喧嘩のあとは、顔まわりや足、しっぽの付け根などに傷がないか確かめます。歩き方や食べ方がいつもと違わないかも見ておきましょう。
傷の見方と手当ての考え方は、喧嘩でできた傷の確かめ方の記事にまとめています。
指針の考え方:「けがを防ぐ・広げない・解決する」
指針は、猫の問題行動への対応を3つの段階で考えるよう勧めています。
- けがを防ぐ:猫と人のけがを防ぐ。割って入るなら身を守る
- 広げない:部屋を分けるなど、いったん喧嘩が起きない状態をつくる
- 解決する:環境を整え、時間をかけて一緒に過ごせる状態に戻す
部屋を分けるのは、あくまで一時的な手段です。次の章からは、喧嘩の原因を減らす方法を見ていきます。
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猫の喧嘩の原因を減らす環境づくり
喧嘩を繰り返さないためには、何を変えればよいのでしょうか。指針が挙げる原因と対策をまとめます。
体の痛みや病気が、きっかけになることもある
仲のよかった猫どうしが急に喧嘩を始めたときは、どちらかの体の不調を疑います。指針は、痛みや病気でいらだっている、動物病院から帰ってきてにおいが変わった、といった家の中のきっかけを挙げています。
関節の痛みで動きが変わったり、鼻かぜでにおいが分かりにくくなったりすることも、猫どうしの関係に響くもの。行動が変わったら、まず動物病院で体を診てもらいましょう。
窓の外の猫や大きな音も、引き金になる
先ほどの研究では、ほかの猫に矛先を向けた事例の95%で、大きな音かほかの猫とのやりとりがきっかけでした(Amat ほか, 2008年)。
窓の外に野良猫が来る家では、窓の下の方を目隠しして、外の猫が見えないようにするのも一つの方法です。指針も、外の猫が見えないようにすることを勧めています。
トイレやごはんは「数」より「置き場所」を分ける
米国で2,492人の飼い主に聞いた調査では、家の広さや、猫の数に見合った数の道具をそろえているかどうかは、喧嘩のサインの多さと強くは結びつかなかったと報告されています(Elzerman ほか, 2020年)。
指針が重視しているのは、ごはん・水・トイレ・爪とぎ・隠れ場所を家の中の別々の場所に置き、間に目隠しをつくることです。数だけそろえても、同じ場所に並んでいれば取り合いになります。
ごはんは、仲のよい猫どうしでも分けて食べさせるよう勧められています。別の部屋に分けられないときは、ひっくり返した段ボール箱で目隠しをするだけでもかまいません。
主食そのものを見直すときは、気をつけたい原材料を実例つきでまとめた記事やラベルを理由に見送った市販フードの一覧が参考になります。割合まで書かれた袋の例はグランツのチキン&サーモンの記事で見られます。
隠れ場所は「猫の数+1」、出入り口は2つ
指針は、安全な場所を猫1匹につき1つ、さらに1つ多く用意するよう勧めています。室内飼いの猫60組を調べた研究では、猫は1日の48〜50%を相手から見えない場所で過ごしていました。
隠れ場所は、出入り口が2つあるものが理想です。1つだけだと、ほかの猫に入り口をふさがれてしまいます。キャットタワーや棚など、高さの違う場所も増やしておきましょう。
遊ぶ時間を毎日つくる
遊びたい気持ちの強い猫が、年を取った猫や気の弱い猫にちょっかいを出すことがあります。指針がすすめるのは、飼い主がおもちゃで1回5分以上、1日2回以上遊ぶ時間をつくること。
喧嘩をしかけることが多い猫には、小さな鈴の付いた猫用の首輪を付ける方法も紹介されています。近づく音が聞こえることで、ほかの猫が先に距離をとれるからです。
猫の喧嘩でよくある誤解
猫どうしの関係については、思い込みで対応してしまうことも少なくありません。指針が取り上げている誤解のうち、喧嘩に関係するものを紹介します。
「猫は平等に扱わなければいけない」
指針は、すべての猫の必要を満たすことは大切だが、どの猫も同じものを必要としているわけではないとしています。病気の猫には多くの世話が必要ですし、遊びが好きな猫もいれば、なでられるのが好きな猫もいます。
同じ時間に同じおやつを配ることより、それぞれの猫が何を求めているかを見ることが大切です。
「上下関係を決めさせれば落ち着く」
猫の社会は、上下関係で成り立っているわけではありません。「どちらが上か決まるまで放っておく」という対応は、指針の考え方とは合いません。
上下関係についての考え方は、新しい猫を迎えるときの11ステップの記事でも説明しています。
「一度喧嘩したら、関係はもう戻らない」
一緒に暮らす猫どうしが、ときどき短い間うまくいかなくなるのは、ふつうの社会的な行動です。それだけで関係が壊れたわけではないと、指針は説明しています。
ただし、激しい喧嘩が何度も続く、長く続く、どちらかが隠れてばかりいるといった場合は、病気がないかを確かめたうえで、行動の面からの支えが必要です。
喧嘩のあとの仲直りの進め方
離していた猫どうしを、どうやって元の暮らしに戻せばよいのでしょうか。
新しい猫を迎えるときと同じ手順で、ゆっくり戻す
指針によると、離していた猫を戻す流れは、新しい猫を家に迎えるときの手順とほぼ同じです。においの交換から始め、ドア越し、網戸やゲート越し、同じ部屋へと少しずつ進めます。
ただし、すでに緊張した関係にあるぶん、迎えるときよりも時間と根気が必要です。緊張した関係が長いほど、喧嘩がはっきりしているほど、戻すのは難しくなります。
合成フェロモンは、補助として考える
猫のフェロモンを模した製品は、不安を和らげる助けになることがあります。ただし指針は、反応は猫の気持ちの状態によって変わり、とても小さいこともあると書いています。
製品だけで解決しようとせず、環境づくりと組み合わせて使いましょう。
続くときは、動物病院に相談する
喧嘩が続くときは、動物病院に相談しましょう。体の病気の確認に加えて、行動の専門の獣医師につないでもらえることもあるでしょう。
薬が役立つこともありますが、指針は、環境の見直しや行動への働きかけと組み合わせて使うものだとしています。どうしても一緒に暮らせない場合に、別々の家で暮らす道を検討することもある、と指針は書いています。
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猫の喧嘩の対策でよくある質問
喧嘩の止め方や仲直りについて、迷いやすい4つの点に答えます。
Q1. 喧嘩を見かけたら、すぐに止めるべきですか?
鳴き声を出さずに組み合っているなら、遊びのことがあります。鳴き声を上げる、一方だけが追い回すといった様子なら、物を間に入れて止めましょう。素手で抱き上げるのは避けてください。
Q2. 喧嘩のあと、どのくらい離しておけばいいですか?
指針では、元の様子に戻るまで数時間から2日ほどかかることがあるとしています。日数で決めず、それぞれがふだんどおり食べ、トイレを使い、くつろげているかを見て判断します。
Q3. 喧嘩をした猫を叱ってもいいですか?
叱ったり罰を与えたりすると、状況が悪くなるだけだと指針は説明しています。大きな声やたたく行為は避け、安全に離して原因を探しましょう。
Q4. フェロモン製品を使えば、喧嘩はなくなりますか?
不安を和らげる助けになることはありますが、反応は猫によって小さいこともあります。ごはんやトイレの置き場所を分ける、隠れ場所を増やすなどの環境づくりと一緒に使いましょう。
まとめ:猫の喧嘩は、安全に離して原因を一つずつ減らす
猫どうしの喧嘩の対策を、もう一度振り返ります。
この記事のまとめ
- 鳴き声のない組み合いは遊びのことも。見分けてから動く
- 抱き上げず、クッション・段ボール・タオルで分ける
- 落ち着くまで別々の部屋で。数時間〜2日ほどかかることも
- 体の不調、外の猫、物の置き場所を見直す
- 仲直りは、新しい猫を迎えるときと同じ手順でゆっくり
猫どうしの関係は、急いで戻そうとするほどこじれやすいもの。猫の様子に合わせて一歩ずつ進めていきましょう。
多頭飼いのほかの悩みは、サイトのトップから記事を探せます。
参考にした指針と研究
- Rodan I ほか. 2024 AAFP intercat tension guidelines: recognition, prevention and management. J Feline Med Surg 26(7), 2024(PMC11292941)
- Elzerman AL ほか. Conflict and affiliative behavior frequency between cats in multi-cat households: a survey-based study. J Feline Med Surg 22(8):705-717, 2020(PMC7383420)
- Amat M ほか. Evaluation of inciting causes, alternative targets, and risk factors associated with redirected aggression in cats. J Am Vet Med Assoc 233(4):586-589, 2008(PMID 18710313)